【70番目のうた】 寂しさに宿を立ち出でて眺むればいづこも同じ秋の夕暮れ 【意訳】 寂しさに家を飛び出してあたりを眺めるとどこも同じ秋の夕暮れだった 【作者 良暹法師】 比叡山の僧侶。 【ご宣託】 この歌は良暹法師が比叡山をおりて、京都の大原に居を…
【69番目のうた】 嵐吹く三室の山のもみぢ葉は龍田の川の錦なりけり 【意訳】 山風が吹く三室山の紅葉は竜田川の錦だ 【作者 能因法師】 遠江守忠望の子で、藤原長能に歌を学び、歌に集中すべく出家をしました。当時は屏風などに描かれた絶景を見て、歌うこ…
【68番目のうた】 心にもあらでうき世にながらへば 恋しかるべき夜半の月かな 【意訳】 心ならず現世で生きながらえたならば恋しく思い出されるに違いない、この真夜中の月が。 【作者 三条院】 三条天皇。1011年に即位するが、藤原道長が自分の孫を即位…
【67番目のうた】 春の夜の夢ばかりなる手枕にかひなく立たむ名こそ惜しけれ 【意訳】 春の夜の夢にすぎないあなたの腕枕のせいで噂がたったらつまらないわ 【作者 周防内侍】 周防守の娘で代々天皇に女房として仕えました。女房三十六歌仙のひとりで「周防…
【66番目のうた】 もろともにあはれと思へ山桜花より外に知る人もなし 【意訳】 共に愛しく思っておくれ、山桜。私には花より他に知る人もいないのだから。 【作者 前大僧正行尊】 敦明親王の孫で参議従二位源基平の息子です。10歳で父を亡くし12歳で出家、…
【65番目のうた】 恨みわびほさぬ袖だにあるものを 恋に朽ちなむ名こそ惜しけれ 【意訳】 恨みに恨んで涙に濡れる袖を干す間もないのにさらにこの恋のおかげで浮き名がたって私の評判が朽ちていっては悔しすぎます。 【作者 相模】 相模の名は最初の夫、大江…
【64番目のうた】 朝ぼらけ宇治の川霧たえだえに あらはれわたる瀬々の網代木 【意訳】 夜が明けて少しずつ明るく宇治川の川面にかかる朝霧も少しずつ薄らぎやがて川瀬に打ち込まれた網代木が姿を現してきました。 【作者 権中納言定頼 ごんちゅうなごんさだ…
【63番目のうた】 今はただ思ひ絶えなむとばかりを人づてならで言ふよしもがな 【意訳】 今はもう、あなたへの想いをあきらめてしまうしかないのだけどそれだけは人づてにではなく直接逢って言う方法があれば。 【作者 左京大夫道雅 さきょうのだいふみちま…
【62番目のうた】 夜をこめて鳥の空音は謀るともよに逢坂の関は許さじ 【意訳】 夜が明けたと、鶏の鳴きマネをして、私をだまそうとしてもこの逢坂の関は許しませんよ。決して逢いませんよ。 【作者 清少納言 せいしょうなごん】 学者の家に生まれ、子供の頃…
【61番目のうた】 いにしへの奈良の都の八重桜けふ九重ににほひぬるかな 【意訳】 いにしえの奈良の都の八重桜が時をこえて今日は京の九重の宮中でひときわ美しく咲き誇っております。 【作者 伊勢大輔 いせのたいふ】 父親は伊勢の祭主で神祇官の大中臣輔親…
【60番目のうた】 大江山いく野の道の遠ければまだふみもみず天の橋立 【意訳】 大江山、生野への道は遠すぎてまだ母のいる天橋立の地を踏んだこともありませんし母からの手紙も見てません。 【作者 小式部内侍 こしきぶのないし】 母親は和泉式部。和泉式部…
【59番目のうた】 やすらはで寝なましものをさ夜ふけて傾くまでの月を見しかな 【意訳】 ぐずぐずせずに、こんなことなら寝てしまったのにもう夜が更けて、沈んでいく月を見てしまいましたよ。 【作者 赤染衛門 あかぞめえもん】 赤染衛門は藤原道長の正妻倫…
【58番目のうた】 有馬山猪名の笹原風吹けばいでそよ人を忘れやはする 【意訳】 有馬山猪名の笹原に風が吹き、そよそよと音をたてる。私があなたのことを忘れたかですって?そんなことありま(有馬)せん、わすれていな(猪名)いわ。まったく、そうよ(そよ…
【57番目のうた】 めぐり逢ひて見しやそれともわかぬ間に雲がくれにし夜半の月かげ 【意訳】 あなたにめぐり逢いあなたという人を確かめたくてもできないうちにあなたは亡くなってしまった。夜更けの月影が雲に隠れてしまうほど、わずかな間に。 ※一般的には…
【56番目のうた】 あらざらむこの世の外の思ひ出に今ひとたびの逢ふこともがな 【意訳】 私の命はもうすぐ尽きてしまう。この世にはいない思い出のあの方にもう一度、お逢いしたい 。 ※一般的な解釈は「この世の思い出に、もう一度だけあなたに逢いたい」で…
【55番目のうた】 滝の音は絶えて久しくなりぬれど名こそ流れてなほ聞こえけれ 【意訳】 滝が枯れて滝の音が聞こえなくなってから久しいけれどもその名声だけは流れ伝わって今でも人々の口から聞こえている。 【作者 大納言公任(だいなごんきんとう】 祖父…
【54番目のうた】 忘れじの行く末までは難ければ今日を限りの命ともがな 【意訳】 「ずっと忘れない」というあなたの言葉が永遠のことだというのは難しい。それなら今日を限りに命が尽きてしまえばいいのに。 【作者 儀同三司母(ぎどうさんしのはは】 高名…
【53番目の百人一首】 歎きつつひとり寝る夜の明くる間は いかに久しきものとかは知る 【意訳】 「今日もあなたは来ない」と嘆きながら一人で寝ていると夜が明けたりするんです。その時間がどんなに長く感じられるものか…あなた知ってます? 【作者 右大将道…
【52番目の百人一首】 明けぬれば暮るるものとは知りながらなほ恨めしきあさぼらけかな 【意訳】 朝が来たら夜になって、またあなたに逢える。それはわかっているけれど、それでも、しらじらと夜が明けていくのを見るにつけ離れなくてはいけないのが悲しいの…
【51番目の百人一首】 かくとだにえやは伊吹のさしも草 さしも知らじな燃ゆる思ひを 【意訳】 これほどまでの気持ちを伝えたいのに伝えられません。伊吹山のさしも草ではないけれどそれほどまでとはご存知ないでしょう。私の燃えるほどの想いを。 【作者 藤…
【50番目のうた】 君がため惜しからざりし命さへ ながくもがなと思ひけるかな 【意訳】 あなたのためなら惜しくもなかった命ですが想いを遂げた今となってはできるだけ長くあってほしいと思っています。 【作者 藤原義孝 ふじわらのよしたか】 類まれな美男…