六拾六番 孤独と厳しさのなかで貫く意思

【66番目のうた】

もろともにあはれと思へ山桜
花より外に知る人もなし

【意訳】

共に愛しく思っておくれ、山桜。
私には花より他に知る人もいないのだから。

【作者 前大僧正行尊】

敦明親王の孫で参議従二位源基平の息子です。10歳で父を亡くし12歳で出家、円城寺で密教を学んだ後に大峰や熊野などで厳しい修行を行いました。1107年に鳥羽天皇の即位とともに護持僧に選ばれ、その後歴代の天皇の病気を祈祷で治したりして、「験力無双」と誉めそやされています。その後は円城寺の大僧正となり、81歳で亡くなるまで歌人としても名声を得ました。

高貴な身の上ですが、早くに父を亡くし12歳で出家、円城寺で密教を学んだ後に大峰や熊野で厳しい修行を行います。病気を治したり悪霊を退散させる加持祈祷で効果をあらわしていたそうです。

【味わい】

 この歌は山で修業をしていた行尊が、台風で折れた山桜を発見して歌いました。もろともに~の前に歌われているのが
折りふせて後さへ匂ふ山桜 あはれ知れらん人に見せばや
台風で折りへしられても、花を咲かせている山桜。人に見られるわけでもないのに立派に咲いている。

その頃、行尊は、延暦寺に自分の円城寺を焼かれてしまった後でした。まさに「折りふせられた」状態だったのです。寺を再建すべく、山々を歩いて托鉢をしていますが、」非常に孤独で厳しい道のりです。さらに誰からも評価されない。しかし風に倒れて、孤独でありながらも春に花を咲かせた山桜と出会ったときに、自らの姿を重ね合わせた歌なのです。

【ご宣託】

今、あなたが挑んでいる戦いは非常に孤独です。人に理解されにくく、助けを得るのも難しいでしょう。さらに非常にストイックさが必要で、生半可な意思では完遂できません。しかし、今、あなたが行っていることは必ず、花を咲かせ実を結びます。どうか自分と自分の道を信じて前に進んでください。