五拾壱番 直情的なあなた。今、必要なのは・・・

【51番目の百人一首

かくとだにえやは伊吹のさしも草

さしも知らじな燃ゆる思ひを 

【意訳】

これほどまでの気持ちを伝えたいのに伝えられません。
伊吹山のさしも草ではないけれど
それほどまでとはご存知ないでしょう。
私の燃えるほどの想いを。
 

【作者 藤原実方 ふじわらのさねかた】

風流を愛し、歌もうまく、若くして順調に出世し、宮中では何人もの女性と浮名をながしました。あの清少納言とも恋人関係にあったのではないかと言われています。

ところが30代半ばのあるお正月、突然、出世コースから転げ落ちる出来事が起きます。

実方が「雨の中、桜とともにずぶ濡れになって桜を愛でる」という歌を詠みました。

桜がり雨は降りきぬ同じくは 濡るとも花のかげにかくれん

宮中では実方の風流を愛でる気持ちとその歌が評判となりますが、日頃から冷静な藤原行成が「実方って・・・変わってるね笑笑」と批判をします。すると実方は怒りに任せて、行成の冠を杓で床にはたき落としてしまいました。その一部始終を天皇が目にしていたことから大問題になり、実方は狼狽の罪で陸奥に左遷させられてしまったのです。華やかな都から離れ、失意の日々を送る実方。不運はそれで終わらず、たまたま乗っていた馬が突然倒れ、その下敷きになって亡くなってしまいます。

左遷されたまま亡くなってしまった実方はその後、鴨川で亡霊になって現れたとか、果ては妖怪となったとか、伝承が伝わっています。妖怪といっても、なんとまぁ可愛らしい雀の妖怪。内裏に一羽の雀が現れて用意されていたご膳をあっという間に食べてしまったという怪現象(?)が起きたそうです。それ、妖怪じゃなくて普通のお腹の空いた雀じゃない?と思いますが、宮中の人々はその雀の姿を京に帰りたくても帰れなかった無念の実方と結びつけたんですね。

【ご宣託】

「さしも草」とはヨモギのことで、お灸にも使われます。火をつければ熱く燃えだします。

そのときの自分の気持ちをそのまま行動に移せば、事態が早いスピードで進展していったり、思いがけない経験ができたりします。特に恋愛面では燃える気持ちを直情的に現すことで、相手の心を動かしたり、情熱的な恋愛につながったりもします。なにより気持ちの解放することで得られる喜びはより一層のものであったりします。ロマンティックで芸術家肌の人にはそんな瞬間は最高のものでしょう。

しかし、仕事面や現実面では、あまりにも直情的だと時に取り返しのつかないことを招きます。「自分に正直」であることで、人に迷惑をかけたり傷つけることもあります。

あなたに今、必要なのはどこかで冷静に判断できる自分を保つことです。楽しいから、好きだから、素晴らしいから。それだけで生きていくと、どこかで躓くことがあります。自分の気持ちに無邪気に素直になれるあなたも大事にしてほしいけれど、どこかで「今は・・・やめておこうか」とブレーキをかけることも大切です。