五拾五番 冷遇にあろうとも、あなたの才能は失われていません。くさらずに続けて。

【55番目のうた】

滝の音は絶えて久しくなりぬれど
名こそ流れてなほ聞こえけれ 

【意訳】

滝が枯れて滝の音が聞こえなくなってから久しいけれども
その名声だけは流れ伝わって
今でも人々の口から聞こえている。
 

【作者 大納言公任(だいなごんきんとう】

祖父も父も関白・太政大臣、母は醍醐天皇の孫、妻は村上天皇の孫、とスーパーセレブ一家で若いうちから出世をする。さらに「三船の才」和歌・漢詩・管弦、全てにおいてNo.1、さらには弓や香にも優れ、ているというスーパーエリートセレブ。しかし父の頼忠が関白を辞任し、藤原兼家が摂政となるあたりから、公任は権力の潮流から外れていきます。あれほどまでに褒め称えられ若くして取り立てられてきた公任の出世はピタリととまり、はとこである藤原道長に追いつかれ抜かれていきます。初めのうちはボイコットをして抵抗をみせるものの、状況はさらに悪化。完全に取り残され不遇の身となる。

和歌集『拾遺抄』を編纂し終わった頃から、彼はライバルであった藤原道長に接近し、迎合を始める。その頃に詠まれたのがこの歌である。

【ご宣託】

 自分の限界が見え、思い描いてきた夢が遠く離れているのを認めざるをえない。そんな現実を受け止めるのは非常につらいものです。しかしあなたは全てを失ったわけではありません。世間の評価がどうであれ、どんな冷遇をうけたとしても、あなたの素晴らしい才能は失われていません。他人の評価というのは非常に流動的で危ういものです。どんな逆境であれ、自分ができることにベストを尽くしましょう。くさらずに、続けるのです。そうすれば自分が心から満足のいく結果に到達するのです。