五拾参番 ただ愛されたいだけなのに。愛するあの人が孤独の原因。・・・さてそれは真実?

【53番目の百人一首

歎きつつひとり寝る夜の明くる間は

いかに久しきものとかは知る 

【意訳】

「今日もあなたは来ない」と嘆きながら
一人で寝ていると夜が明けたりするんです。
その時間がどんなに長く感じられるものか…
あなた知ってます?

【作者 右大将道綱母 うだいしょうみちつなのはは】

藤原道綱の母。本名は明らかでありません。今風にいうなら「道綱君ママ」ですね。本朝三美人とも言われ、歌も上手。のちに摂政となる藤原兼家と玉の輿婚をします。しかし兼家にはすでに正妻もいて、さらにどんどん新しい女性が現れる。道綱君ママは心穏やかでない日々を送ります。その日々を恨み言たっぷりに、和歌を織り交ぜながら書いたのが「蜻蛉日記」です。

この歌は兼家が久しぶりに訪れたのに、すぐに戸を開けようとせず「少しくらい家の前で待たせてやろう」と意地悪をしたら、兼家は待ちきれず去ってしまう。そして道綱母は兼家にこの和歌とすこし枯れかけた菊と一緒に送るのです。

【ご宣託】

本当はただ愛されたいだけなのでしょう。愛されたい、大切にされたい、認められたい。そのシンプルな願い、心からの叫びが満たされず、苦しんでもがきにもがいませんか。果ては満たされないがゆえに、一番大切に思っている相手を批判したり攻撃してしまう。それが逆効果だとわかってはいるけど、自分の孤独の深さの原因は愛を求めている相手だったりします。可愛さ余って憎さ100倍、といった状態です。

素直に「私だけを愛して、もっと構って」と伝える方がまだマシですが、実際、素直にそう伝えたところで状況は好転するとは思えません。

この人間の業が自らを貫いていくのを、燃え盛る炎を見るようなおそろしい気持ちで眺め続ける、という人生もあります。が、満たされることのない孤独を手放すという選択肢があることを、どこかで覚えていてほしいです。「嘆きつつ一人寝る夜」から、「嘆きつつ」も「一人」も取っ払って、ただの「寝る夜」に変換することも、あなたにはできます。それが恋人が訪れない一人の夜だとしても、「ただの夜だ。寝てしまおう」ととらえることもできます。そこにあえて悲しい意味づけをして自分を傷つける必要はありません。

「自分が惨めで孤独」だというのはあなたの主観です。あなたは本当にあなたが思っている悲劇の主人公なのでしょうか?そもそもそれを誰が決めるのでしょうか?もし決められる人がいるならあなた自身です。あなたを通してみる世界は、苦しみだけの世界にも、穏やかな世界にも、あなたの見方次第で変えられます。どちらを選ぶのかは自分次第なのです。