六拾四番 暗闇が少しずつ少しずつ明るくなっていきます
【64番目のうた】
朝ぼらけ宇治の川霧たえだえに
あらはれわたる瀬々の網代木
【意訳】
夜が明けて少しずつ明るく
宇治川の川面にかかる朝霧も少しずつ薄らぎ
やがて川瀬に打ち込まれた網代木が姿を現してきました。
【作者 権中納言定頼 ごんちゅうなごんさだより】
お父様である大納言公任。
小式部内侍をからかった藤原定頼の歌がきっかけで
小式部内侍は非常に優れた歌を返したことにより百人一首に選ばれています。
また相模とも恋愛関係にあったとされています。
書や管弦が上手い趣味人で、正二位権中納言にまでなりました。
【味わい】
冬の夜明けにうつろう時の風景を味わう歌です。ほんの少し前までは夜の暗闇におおわれていた世界に、前触れもなく静かに少しずつ光が射してきます。やがて川面に漂っていた霧も少しずつ消えていき、さきほどまでは見えなかった網代木(魚を捕る仕掛けの木)が現れてきます。美しい時の流れの情景ですよね。
網代木は川面にぶっ刺さっているただの木の杭なので、なにが風流なのか現代人にはわかりませんが、平安の人々は好きで、度々登場します。現代人に置き換えるとなんなのか考えてみましたが、海辺にどかんと置いてあるテトラポットはどうでしょう。よく歌に歌われますよね。網代木もテトラポットも人工的で、形状に美しさを感じづらいものの、なぜか「風流な気がする」存在だと思います。
【ご宣託】
なかなか進展しなかった事態は、少しずつ動きだします。膠着してしまった関係も、絡まった糸がほどけるように、少しずつ少しずつ変わっていくでしょう。ここで焦ってはいけません。静かに事態を見守ることが肝要です。全て解決とはいきませんが、すこしずつ糸口が見えてきます。